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作品紹介

蓮-青の幻想・生命賛歌・極楽浄土

  • 青蓮院門跡
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青蓮院門跡<京都・粟田口> 2005/01

ナマ・サマンダ・バサラダン・センダ・マカロシャナ・ソハタヤ・ウンタラタ・カンマン

新年の護摩焚き行事に供して五年になる。
その帰り、華頂殿にて善哉を馳走になった。そこで白い襖を見て、私は「これに絵を描きたい」と呟いたようだ。
還暦を前に絵を描き出して二年足らず、そんな私が大胆なことを思いついたものだ。

昨秋(平成十六年)、青蓮院で催された『にっぽんと遊ぼう』の窓口になった執事の高木英勝さんを通じて、 ご門主に襖絵の構想を提案することになったが、白書院、華頂殿に六十面の襖絵を描くというのに、不思議なくらい自然体で臨むことができた。『にっぽんと遊ぼう』の呼びかけ人・代表の高見重光氏もご奉納に賛同してくれた。

すでに襖の下地は仕上がっていた。その六十面の白い襖は仮貼りの姿で私を待っていてくれた。何か因縁めいたものを感じたのを覚えている。

「本金、岩絵具、膠に漆といった伝統的な画材にこだわらず、現代の画材、アクリル・ガッシュとネオ・カラーで描きたい」とご門主に伝えた。そして「もし、俵屋宗達や伊藤若冲が現代に生きていたら私と同じ考えの筈です」と付け加えた。それを聞いていたご門主は静かにお笑いになった。伝統に媚を売りたくない私を理解してくれた。

製作の二か月間、ただ夢中だった。早朝、蓮をスケッチに天龍寺、勧修寺へ足を運んだ。蓮の花と葉っぱが、私のリズムで展開しだした。ロックやポップ・アートを生き様としてきた私が、違和感なしに襖絵の中を駆け抜けた。